メンタルヘルスケアは「4つのケア」が継続的に、そして計画的に行われることが重要です。
それぞれの置かれた立場で、取り組めることを実践することが大切なことは言わずもがなですが、事業場に行きお話を伺う中で感じることは管理職によるラインケアがその要であるということです。
目次
ラインケアとは?
ラインによるケアでは、部長や課長などの管理者が「いつもと違う」部下にいち早く気づくことが重要だと言われます。
組織をマネジメントする管理者には、使用者である事業主から、労働者である従業員に対して、指揮・命令を行うための権限が委譲されています。この権限とは具体的にどのようなものでしょうか。
例えば、部下に指揮命令をして業務を遂行したり、部下の評価をしたり、また、部下である従業員の健康を守る義務も含まれます。そして、この義務を果たすためには、まず、部下の健康状態を把握しなければなりません。
いつもと違う部下に気づく
「部下の健康状態」と言われても、、、自分の健康は自分で管理すべきものでしょう。一体何を把握すればよいのです?そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ラインによるケアの中では、「いつもと違う部下に気づく」ことがとても大切だと言われます。
当然のことながら、「いつもと違う」ことに気づけるということは、普段の部下の様子がわかっているということです。日頃から部下の行動様式や人間関係に目を配っておく必要があります。
こんな様子がありませんか?
あなたの部下、同僚、後輩はどうでしょう。
- 遅刻や早退、欠勤が増える
- 残業や休日出勤が不釣り合いに増える
- 休みの連絡がない
- 仕事の能率が悪くなる
- 業務の結果がなかなか出てこない
- 報告や相談、職場での会話がなくなる
- 表情や動作に活気がなくなる
- 不自然な言動が目立つ
- ミスや事故が目立つ
- 服装が乱れたり不潔になる
体調不良で休みがちになることの原因の一つが、ストレスが原因のものも多い、頭痛や胃痛、腹痛かもしれません。ケアレスミスが多くなる、仕事の能率が悪く残業が増えるなどは、ひょっとしたらよく眠れていないからかもしれません。些細なことでイライラしたり、怒鳴ったり、逆にメソメソしたり、外見を気にしなくなったりすることもサインの一つです。
仕事で一緒に過ごす時間は、眠っている時間を除けば、家族で過ごす時間よりも長いのです。周囲の「あれ?いつもと違うな。」というちょっとした違和感、サインを感じることがメンタルヘルス不調の未然防止や早期発見にはとても重要です。
気づいたらどうすればよいの?
いつもと違う部下の行動の背景には何らかの病気が隠れていることが少なくありません。管理者は部下の「いつもと違う」状態に気づいたとき、労務管理上の何らかの対応をする事が求められます。一体どうすればよいのでしょう。
何らかの病気が隠れているかもしれないとはいえ、病気の有無を判断するのは産業医やそれにかわる医師の役目です。管理者が判断することはできません。
管理者に求められることは、本人に医師のもとに行かせる、あるいは管理者自身が医師のところにいくなどです。これらのルールを事業場内であらかじめ決めておく必要があります。
具体的な対応例
- 管理者が「様子がいつもと違うようだけどどうかしたのか?」と声をかける。
- 部下の話をじっくり聞く。部下との関係性によっては、その部下が信頼をしている先輩や同僚に頼む。本人が話したがらないときは深く追及しない。
- しばらく状態を見守り、いつもと違う様子がさらに続くようであれば再度話を聞く。
- それでも応じないときは産業医のところに行くように指示する。事業場の規模が産業医の選任義務のないところは、心療内科の受診を促す。
- 産業医へ相談することに部下が躊躇する場合は、心配だから相談に行くと部下に断ったうえで上司自身が産業医のところへ行く。産業医の選任義務のない事業場は、家族へ相談する。あるいは、産業保健総合支援センターにて労働者の健康管理にかかる相談等(メンタルヘルス不調の労働者に対する相談・指導)の無料サービスを利用する。
産業保健総合支援センターでは、長時間労働者に対する面接指導のみならず、メンタルヘルス不調を感じている労働者及び当該労働者を使用する事業者に対し、医師または保健師による相談・指導を行っています。
お住まいの都道府県の「産業保健総合支援センター」に問い合わせてみてください。
サインに気づいたときの対応ルール
あなたがお勤めの事業場は50人以上の規模ですか?産業医は選任されていますか?
(安全)衛生管理者は選任されていますか?(安全)衛生委員会は開催されていますか?
10人以上の事業場であれば、(安全)衛生管理者の選任義務はありませんが、(安全)衛生推進者の選任義務があります。
まずは、(安全)衛生管理者や(安全)衛生推進者が中心となり、「いつもと違う」に気づいたときの事業場内ルールを決め、管理者に周知しておくことが重要です。
委員会が開催されているのであれば、まずはこのルールを決めることをしていただきたいと思います。それが、メンタルヘルス不調者を出さないための第一歩です。