うつ病という言葉をよく耳にするようになったのはいつ頃からでしょうか。
あなたの職場でも、メンタル不調のために休職されている方が現在進行形でいらっしゃったり、過去にいらっしゃったり、あるいは同じ課ではないけれどメンタル不調が理由でお休みされている方が同じ職場にいると耳にしたことがあるという方もいらっしゃるでしょう。
厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、平成8年には43.3万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、平成20年には104.1万人と12年間で2.4倍に増加しました。「患者調査」は、医療機関に受診している患者数の統計データですが、うつ病患者の医療機関への受診率は低いことがわかっており、実際にはこれより多くの患者がいることが推測されます。
この調査結果をみると、平成20年ごろから少しずつ「メンタル不調」、「うつ病」などの言葉を耳にする機会が増えていったことがうかがえます。
3つの予防(メンタルヘルス対策)、4つのケア(メンタルヘルス対策)、「いつもと違う」部下への気づきと対応 など、まず組織として必要なアウトラインの整備ができている。それらを整えていただくことは大前提として、それが整っている事業場でも案外できていない対応について書いてみたいと思います。
目次
職場の同僚がお休み。でも理由がよくわからない。
ある職場のお話です。
同僚のSさんが一昨日から会社をお休みしています。課員のスケジュールが記してあるホワイトボードには「年休」の文字。上司からはSさんがお休みの理由など詳しいことは誰もきかされていません。
次の日もSさんはお休み。毎日のようにSさん宛てにお電話が入ります。クライアントはもちろん、他部署、他支店のメンバーなど。
「お休みをされているので」とお伝えすれば、「ではまた改めます」と言われ、それを続ければSさんのデスクには伝言メモが山積みとなります。
電話を受ける同じ課のメンバーもなぜお休みなのか、いつ頃出勤されるのか、どのように対応すればよいか困惑気味。
課長にはその対応内が聞こえています。しかし、特に何か指示がある様子はありません。
ひょっとしてメンタル不調?うつ病?
その後も課長からは何の説明もなく、職場にはなんとなく聞けない空気が漂っています。
Sさんから指示を受けて仕事をしているメンバーもおり、そのメンバーは直属の上司がいないままどのように業務を進めてよいのかわからず困り始めました。
いつか頃合いを見て説明があるものと思って待っていましたが、いっこうに課長や主任からは何の説明もありません。
そして、いつからかホワイトボードのSさんのスケジュール欄には、「年休?」の文字が。「?」って…
恐らくSさんはうつ病か何か、メンタル不調が原因でお休みをされているであろうことを課内のメンバーは何となく感じはじめます。
かかってきた電話への対応は?仕事の指示は?
Sさんあてにお電話をくださる方も、ちょっとお休みされているくらいに思われているので、何度もお電話がはいります。
これでは、先方にも申し訳ないと思ったメンバーの一人が主任に尋ねました。
「Sさんあてのお電話ですが、お休みをされていることだけお伝えしていると改めて何度もお電話をいただくことになりますし、どのようにお伝えすればよいでしょう。」
伝えてから数時間後、「Sさんあての電話は私につないでください。」と指示がありました。
Sさんから仕事の指示をもらっていたメンバーも現在の仕事の進捗状況を主任に報告し、今後の業務の進め方について相談をしました。そこで、初めて課長や主任から今後の仕事の進め方について、誰にどのように相談報告するのかなどの指示がありました。
メンタル不調のため休職する部下を持った時の対応
うつ病だから… 病名は言えないよね?伝えてもいいのかな?とモゴモゴ考え、うやむやなままに過ごしているという職場が少なくありません。
メンタル不調で長期休職する部下を持ったとき、最低限しておかなえればならない3つの対応があります。
- 病名をそのまま伝えるのではなく、「体調不良のため○か月休む」とおおよその休職期間を伝える
- 場合によっては休職期間が延びることあることも伝える
- お休み中の仕事は、メンバーで割り振ることを伝える
あなたの職場はいかがでしょうか。
あなたの部下がメンタル不調のために長期休職することになったら、この3つを早い段階で部下全員に伝えることが大切です。職場内でいらない不安や心配を増殖させないためにも必要なことです。
職場のメンタルヘルス対策の推進者やストレスチェックの実施者、実施事務者なども、管理職からの相談に適切にこたえるためにも知っておいていただきたい内容です。
職場の(安全)衛生管理者・(安全)衛生推進者は、3つの予防(メンタルヘルス対策)、4つのケア(メンタルヘルス対策)、「いつもと違う」部下への気づきと対応と合わせて、ラインケアの中ででも管理職に対してこの3つの対応を教育しておくことが職場内の混乱を防ぐ鍵となります。