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安全配慮義務違反をとわれた過労死判決
ドーナツチェーンとフランチャイズ契約していた製菓会社に安全配慮義務違反などがあったとして、2017年1月30日に津司法裁判所は計4600万円の支払いを命じる判決がくだりました。
男性店長(当時50)が2012年に死亡したのは過重な業務が原因の過労死だとして、遺族が製菓会社と社長らに約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、津地裁は30日、計4600万円の支払いを命じた。
男性店長(当時50歳)は1986年に入社し、2008年に店長となり、2010年から店舗指導などをする課長代理を併任していた。
判決によると、男性は死亡前6カ月間の時間外労働時間の平均が月112時間だった。2012年5月15日早朝、自家用車で通勤中に致死性不整脈により死亡した。
会社側は、男性が管理監督者であったことから、長時間勤務は自身の判断であり過重労働を課したわけではないと主張していた。
岡田治裁判長は判決理由で「店長の兼務により業務量が増え勤務時間が増えた。長時間労働により心身に負荷がかかり死亡に至ったと考えるのが相当。会社側は業務の軽減措置も取っていない」と指摘した。
管理監督者だから労働時間を管理しなくてよい?
管理監督者には労働時間、休日、休憩に関する労働基準法上の規定の適用を受けません。
・32条(労働時間)1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない
・34条(休憩)1日6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければならない
・35条(休日)毎週少なくとも1日の休日(法定休日)を与えなければならない
・37条(割増賃金)32条の法定労働時間を超え、または35条の法定休日に労働させた場合は、所定の割増賃金を支払わなければならない
管理監督者は自己の労働時間について裁量が大きいため労働基準法による保護になじまないからというのが理由です。
しかし、以下の条文は管理監督者であっても適用されます。
・37条(割増賃金)午後10時から翌日午前5時まで労働した場合は、深夜割増賃金(2割5分)を支払わなければならない
・39条(年次有給休暇)勤続年数に応じて所定の年次有給休暇を付与しなければならない
労働時間や休日、休憩については、自分次第だというのが適用が除外の理由ですが、深夜労働に関しては、管理監督者だから遅い時間になっても体への負荷がかからないという話にはなりません。
深夜(午後10時から午前5時)の時間帯に割増賃金を支払うことが定められているのは、人間の生理的リズムとして日中に労働し深夜に労働することは体への負荷が大きいことが理由です。
一般職でも、管理職でも、深夜業による体の負荷に変わりはありません。
管理職の時間管理は本人任せ
「管理職だから時間管理は本人に任せています。」
このような事業場も少なくないのですが、深夜割増賃金を支払う必要がある以上、「管理職だから時間管理をしなくてよい」ということはありません。
そして、事業者に課されている安全配慮義務の観点からも、労働時間管理は当然に行うべきものなのです。
残業代を払わなくていいから、時間管理をしていない。
残業代は出ない立場だから、時間管理しても仕方ない。
このご時世、そんな考えをお持ちの事業主や管理職の方は、すぐにその考えを改めていただく必要があります。
事業者の「安全配慮義務」が問われるだけではない、労働者も?
上記の判決は、約9500万円の損害賠償を求めた訴訟に対して、計4600万円の支払いを命じ、3割の過失相殺を認めています。
事業主に「安全配慮義務」労働者には?
次回に続きます。