定着率の差は教育に

仕事がら県下の事業場に伺って、年間100人前後の代表取締役社長や人事労務のご担当者さま、衛生管理担当者さまとお話をさせていただく機会があります。

その中で、この事業場は法令に対する理解が深いなぁとか、管理職によるマネジメント力が高いなぁと感じる事業場には共通点があります。

それは、社内の教育研修体系を整備されているということです。

香川県では、子どもに対しては教育熱心だと感じますが、残念ながら社員教育に対してはまだまだ手つかずの事業場が多いのが現状です。

しかし、今後、労働人口が少なくなることは明らかで、採用の際に応募者にとって魅力ある企業であるだけでなく、今勤めている人にいかに継続勤務してもらうかを真剣に考えていかなければ、経営が成り立たなくなる時代が、もうすぐそこまで来ているのです。

「2年前くらいから香川県では新卒採用が難しくなって、学校回りのために四国行脚をしていますよ。」

そんな声を聞く機会も多くなってきました。

「うちはまだまだそんなことないから大丈夫。」

本当にそうでしょうか?

今から何らかの対策をとっておかなければ、「今年は採用ができなかったなぁ~」と実感値として感じるようになった時には、事態は随分深刻にいなっています。

 

目次

あなたの会社の定着率は?

先日伺った介護事業場では、離職率を一桁にすることを目標に様々な取り組みをされていました。

訪問介護員、介護職員の採用・離職の状況(公益財団法人 介護労働安定センター 平成27年度介護労働実態調査 介護労働の現状について平成26年10月1日~平成27年9月30日)によると、介護の非正規職員の離職率が最も高く21.7%であり、訪問介護員と介護職員、それぞれの正規職員、非正規職員を平均すると16.5%という数字がでています。

香川県下で人事労務のご担当者さまにお話を伺っていると、介護現場の離職率はもう少し高い印象がありますが、全国的には16.5%が平均的な数字のようです。

離職率が低いとは言えない業界で、離職率一桁台と、数値目標を明確にして取り組まれている事業場の姿勢に感心しました。

 

定着率の差はどこにある?

独立行政法人労働政策研究・研修機構がまとめた人材不足の現状や働き方の在り方に関する調査の結果(「人材(人手)不足の現状等に関する調査」 (企業調査)結果 及び 「働き方のあり方等に関する調査」 (労働者調査)結果)JILPT 調査シリーNo.162 2016 年 12 月 によると、人材確保・定着のための効果的な取り組みがみえてきます。

■人材確保・定着のための実施事項

正社員の入社 1 年後の定着率が高い(平均値以上の)企 業群と、低い(平均値未満の)企業群で比較すると、両者の差が大きいのは以下の順となる。

1)「定期的な面談、 カウンセリングの実施」(12.6 ㌽差)

2)「安定して働ける長期雇用(慣行)」(12.5 ㌽差)の

3)「良好な職場環境の確保」(11.9 ㌽差)

4)「人事制度の明確化、評価・考課の公平・公 正化」及び

  「教育訓練(能力開発)機会の充実」(ともに 11.8 ㌽差)

 

同様に、入社 3 年後で差が大きいのは、以下の順となる。

1)「教育訓練(能力開発)機会の充実」(15.0 ㌽差)

2)「良好な職場環境の確保」(12.8 ㌽差)

3)「人事制度の明確化、評価・考課の公平・ 公正化」(10.3 ㌽差)

 

1年以内の離職を食い止めるためには

先にお話しした離職率一桁を目指しておられる事業場では、1年に1回施設長が従業員全員と面談をされています。

代表が全員面談をされていたことにはじまり、現在は組織が大きくなったため、各施設長に任せておられますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果からも、正社員の1年後の定着率に効果的だと考えられる項目の第1位が「定期的な面談、 カウンセリングの実施」なっています。

だた、形だけ面談をするのではなく、そこであがってきた職員の声に対して何らかのアクションをおこしすことがミソです。

他にも、WEB版の目安箱のようなものを設けておられ、1年に1回、無記名で投稿された職員からの要望に代表が一つ一つ回答されているとのことでした。

ことが大きくなる前に未然に不満の芽を摘んでおくことや、従業員一人一人と真剣に向き合う姿勢は、この事業場で頑張っていこうというモチベーション維持に大きく作用するようです。

 

定着率の差は教育に

そして、次のステップとして、「教育訓練(能力開発)機会の充実」があげられます。

入社3年後の定着率では、教育訓練機会が充実しているかどうかがその差に繋がっているという結果が出ています。

教育訓練といえば、専門的な業務、資格取得に必要な研修を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

しかし、それだけではありません。

入社3年後の定着率に影響すると考えられるものの2つ目に「良好な職場環境の確保」があがっています。

今年、平成29年1月1日から育児・介護休業法が改正されて、ハラスメント防止措置が義務化されましたが、ハラスメント教育やメンタルヘルス教育、職場環境改善に向けた小集団活動等、良好な職場環境を確保するための要となる研修も定着率アップには欠かせないものです。

「法律の改正情報は人事だけが知っておけばよい。」と考えるのではなく、従業員全員で皆が働きやすい職場環境をせうびするためにも、これを機会ととらえて、研修を実施してみてはいかがでしょうか。

そして同時に、定着率の向上を目標とした教育研修体系の整備を進めて行かれることをお勧めします。

来年度の幕開けも目前です。今から準備していきませんか?