勝手に時間外労働をして長時間労働になっている社員に頭を悩ませています。どうすればよいでしょう。

安倍首相は2016年8月3日の記者会見にて、「働き方改革担当大臣」を設けたことを発表しました。

今回の内閣の最優先課題は「経済」、新しい3本の矢を放つ的として「戦後最大のGDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」を掲げ、それを実現するための最大のチャレンジが「働き方改革」であり、それを推進していくためのポストです。

その前から働き方改革実現会議などが開催されていましたが、ここにきて時間外労働削減のために様々な取り組みをはじめている事業場が日増しに増えてきているように感じます。

今日は労働時間の削減に本気でチャレンジしようとしている企業からあったご相談から、仕事が人についてしまうリスクを回避する方法を考えてみたいと思います。

 

目次

勝手に残業する社員、どうしたらいい?

問題とされていた従業員さんはシステム担当とのことでした。

サーバー管理から会社のホームページまわり他、システム関係はその人一人に任せておられたようです。

会社も上司も具体的に何をしているのか理解ができず、その人のやりたいようにやらせていました。

そして、彼は自分の好きなように居残りや休日出勤を繰り返していました。

専門性が高いという理由からその方の業務内容を理解できる人がいない、そしてマネジメントすることなく長期間が経過しているということが仕事の中身がブラックボックス化してしまった要因のように思います。

しかし、月に100時間を超える状態もあり、会社としても何とかしなければと真剣に労働時間の削減に着手しはじめました。

 

仕事が人についてしまっている状態

会社全体で、業務の棚卸、見える化、多能工化をする動きがスタートしました。

時流にのってクラウド化をする方向性に伴い、彼の行っていた仕事の一部は外部委託することになりました。

しかし、業者のやっている仕事が気に入らない、自分の好みに合わないという理由で勝手に自分のやりたいように作り直してしまったり、社内の他の女性に任せたSNSへのアップ画像も、社長がこれで十分だというのに画像があらいと言って書き換えてしまったり…

外部業者に出すよりも私がやった方がコストがかからないと本人は言っているようですが、一人のために深夜や休日に会社を開けていることでかかる光熱費や割増賃金等の方がその何倍もかかっているのです。

質の向上を目指すことは大切ですが、求められているアウトプットの質に応じた仕事をすることが、労働者には求められています。

質の追及が個人の趣味の世界にまで到達すると、それはもはや仕事ではなくなってしまいます。

 

多能工を進めるためのチーム作り

まずはブラックボックスとなっている業務の棚卸をすることが必要でしょう。

問題となっている本人だけでなく、職場の全員が、社長の号令の元、各自の業務の棚卸をします。

そして、他の人とシェアしやすい業務から、一人でやるのではなく、2人、ものによっては3人ができるようにしていきます。

いきなり何もかもと考えず、できるところから着手することが重要です。

 

「やることリスト+α」を作成する

早急にことを進める必要がある場合は、各自にまとまった時間をとって業務を棚卸してもらう作業を機関を区切ってしていく必要があります。

ただ、2年、3年という中長期のスパンで多能工化をすすめていくのであれば、各自に日々をやることリスト作ってもらうところからスタートすることも有効です。

各自に朝一番に自分のその日にやるべきことを書き出してもらいます。

やることリストを作っていたり、やるべきことを付箋に書いてパソコンにペタペタ貼っている人は多いのですが、そのリストに見込み時間を書いている人はほとんどいません。

箇条書きで書き出したやるべきことに、優先順位をつけ、つぎにその業務をおえるのにかかるであろう見込み時間を書いていきます。

そして、業務が終わるごとに実際にかかった時間を記録していくのです。

これもチームで取り組み、お互いに書き出した内容をメンバーにシェアしていけば、自分のやるべきことをメンバーにコミットすることとなり、1人で取り組むよりも結果に対してシビアに取り組めます。

また、マネージャーは業務の再配分を考えやすくなります。

 

時間の意識と自分へのコミット

定時前には、ミーティングの機会を設け、各自自分の業務をどのように遂行できたかを共有します。定時前に1人1分、5人1チームくらいで5分くらいのミーティング時間であれば、実施することはさほど難しいことではないかと思います。

課内の人数が多ければ、5,6人になるようにグルーピングします。

問題になった彼のように基本的に一人で作業をしている人も他の業務を行っているメンバーと一緒に仕事内容を共有することがキモです。

仮に、残業が必要であれば、加えて何をどのくらいの時間をかけてする必要があるのかをあわせて発表してもらいます。

各自に時間を意識してもらう意味でも有効です。

この「やることリストフ+α」は、業務の棚卸にもつながります。

まとまった時間をとらなくとも、日々の記録が業務の棚卸になっていくということです。

 

先手を打ち、自分で時間をコントロールする

「やることリスト+α」のお話をすると、「突発的な仕事が多いので難しい」とおっしゃる方がいます。

しかし、逆に、突発的な仕事が多いからこそ、優先順位も所要時間も考えずに1日の仕事に手をつけるのは危険です。

「やることリスト+α」の作成で時間を意識し、効率をあげることによって生まれる隙間時間を確保する必要があるのです。

また、この「やることリスト+α」を作成することで、突発的に仕事を入れられる前に先手をどう打つかを考えることができます。

「やることリスト+α」が実行できなかった時は、その理由も箇条書きでメモしておけば、様々なことが見えてきます。

いつも定時を過ぎてから注文をしていくるお客さんの存在が見える化できれば、そのお客さんにお昼頃に自ら注文を聞きにいくなどのアクションを起こすことで、相手に時間を握らせるのではなく、自分で時間をコントロールすることが可能となります。

どんなことで周囲に振り回されるが分かれば、振り回される前に、自らどう動けばよいかを考えられるのです。

追い込まれる前に先手を打ちましょう。

 

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専門債が高いという理由で、言われても仕事内容がわからないという理由で、マネジメントを放棄している上司、会社が少なくないように思います。

労働時間削減のための時間外労働の事前申請制度導入の話をすると「仕事内容がわからないから、その日に必ずやらなければならない仕事かそうでないか管理職にも判断できないと思うんです。」と言われることも少なくありません。

さも当たり前のように言われますが、管理職は管理職である以上、詳細までを熟知するひつよぅはなくとも、そのあたりの判断ができるくらいの最低限の内容を知っておく必要があります。

経理を一人で担当していたことによる不正問題も、任せているという名の放任が招いた結果です。

「よくわからない」という前に、分かろうとするところから、始める必要があるかもしれません。