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出張がからむ場合の心身の疲労回復対策
海外出張での納品作業のための出張があり、現地作業はどうしても長時間労働になりがちです。
そして、遅い時間に帰国した時にいったん体を休めることを伝えているのに、そのまま会社に戻ってきて作業をする社員がいてどうしたものかと頭を悩ませています。
以前、このようなご相談を受けたことがあります。
この会社では、時間外労働の削減に向けて、残業の事前申請制度の導入やタイムカードと申請記録の突合せとその開きの大きな社員へのヒアリングなど、地道な取り組みをされていました。
その結果、社員の時間に対する意識が少しずつ変わり、大幅な時間外労働削減を実現させました。
しかし、どうしても海外出張のからむ業務の長時間労働問題が解決できずにいました。
現地での作業は、各リーダーにいかに交替で休息時間を確保したもらうかを考え指示を出してもらうか、まずはそれを徹底していくための研修をすることが方法の一つでした。
そして、出張から帰ってきた日に長時間になってしまうことに関しては、明確なルールがないことが問題であったため、ルールを整備することが必要でした。
休息時間の確保に関したルール決定(勤務間インターバル制度)
具体的にどのようなルールを決めればよいのか。
ルールとして導入すると効果的なものの一つに「勤務間インターバル制度」があります。
勤務間インターバル制度とは、勤務の終了から次の勤務開始までの時間を一定時間あけて確実に休息時間を確保しようというものです。
例えばこんな導入事例があります。
ケーブルネットテレビ局専用チャンネルの配信事業などを行っているジャパンケーブルキャスト株式会社(従業員数60人)
は働き方改革に向けた複数の施策を発表しています。
全国へ出張する営業社員が多いことから、出張から帰った日の睡眠時間確保に重点を置いた「勤務間インターバル制度」を導入しました。
勤務間インターバル制度では、勤務終了から翌日の勤務開始までの間隔を9時間あけることとしました。特に、社員が出張した場合は、「出張先から帰宅した時間」から翌日の勤務開始まで9時間のインターバルを空けることとしました。
例えば、深夜1時に帰宅した場合、翌朝は始業時刻の9時より1時間遅い10時出勤で良いということです。
その日は9時に出社したものとしてお給料の支払いはあります。
社内の安全衛生委員会で健康阻害リスクを洗い出した結果、出張から帰った日の睡眠時間確保が問題として上がったことが「勤務間インターバル制度」導入の契機のようです。
この会社の勤務間インターバル制度の大きな特徴は、出張からの戻り時間をインターバルに入れず、家で確実に休めるよう工夫していることです。
勤務間インターバル制度に関する助成金も
厚生労働省は、勤務間インターバル制度の導入に関する助成金を新設しています。
今までインターバル制度を導入していないところであれば、事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを新たに導入することが成果目標として必要となります。
下記の中から何か一つ以上の取り組むこととされています。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
- 就業規則・労使協定等の作成・変更(時間外・休日労働に関する規定の 整備など)
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- その他の勤務間インターバル導入のための機器等の導入・更新
支給額は休息時間数が9時間以上11時間未満で40万円。11時以上で50万円です(2017年現在)。
(既に導入済みの事業場で時間数や対象者数を増やす等の場合は支給金額が異なります)
詳しくはこちら→職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)
新たに制度導入するのは良いけれど、労働者の意識改革が必要
人間にとって変化は恐怖で、変わらないことに安心感をおぼえます。
新しい制度が導入される→変化が起きようとしている→心理的バリアの発生
たとえ、その変化が自分にとって良い影響を与えるものだとしても、人にとって変化は恐怖なのです。
「明日から勤務間インターバル制度を導入します。制度の概要こんな感じです。」と説明しても、社員の気持ちはついてきません。
制度導入研修の役割は重要です。
どんな目的でその制度が導入されるのか、導入にはどんな背景があり、導入することによってどのようなメリットがあるのか。
制度の簡単な説明だけでは、せっかく導入しても形骸化するのは時間の問題です。
導入の背景や目的、メリットは必ず伝えましょう。
訴求力、推進力が違ってきます。
労務管理担当者、労働者に対する研修その他、勤務間インターバル制度の導入に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせいただければと思います。