ストレスチェックの集団分析結果をどう活かす?Part2

 

 

2015年12月に50人以上の規模の事業場に義務化されたストレスチェク制度。

2016年11月30日を目指して滑り込みで実施をした事業場は、集団分析結果が出始めているころでしょうか。

集団分析の目的は、職場改善であり、働きやすい職場づくりです。

分析をしただけで終わってしまえば、「現況の確認」はできても、「改善」にはつながりません。むしろ、「せっかく分析をしても、何も変わらない」「改善のためのアクションが全くおこされていない」となると、従業員の会社に対する信頼を失うことに繋がりかねません。

具体的に何をしたらよいか。「ストレスチェック実施マニュアル」には、職場環境改善のためのツールとして、「職場環境改善のためのヒント集」や「従業員参加型の職場環境改善ワークショップ」が紹介されています。

これが、前回、集団分析の活かし方としてお伝えした方法です。

社内の各部署でローリングし、現場で何に困っていて、それを快活するにはどうすればよいのか、現場のメンバーだからこそ考え付く改善方法があります。

そこで挙げられた声をもとに、これから職場改善をするにあたり、何を目指し、どんなスケジュールとするか、目標と計画の策定を支援するツールとして活用し、PDCAを回すことで職場の空気が少しずつ入れ替わることを実感していただけることと思います。

 

しかし、初年度は様子見で、全社員に、または衛生委員会等でグループワークを展開していくのはハードルが高いと感じておられる事業場もあるでしょう。

今回は、グループワークの他に集団分析結果を活かす方法を考えてみたいと思います。

 

目次

会社のトップによるメッセージの発信

ストレスチェックの集団分析の結果は、会社のトップや担当役員の方の目には触れることになると思います。

分析結果そのものを全社に公にするわけにはいきません。

ただ、結果に対する感想やこれからどんな職場づくりを目指して欲しいかという「ビジョン」をトップメッセージとして配信していただきたいものです。

従業員を大切に思う気持ちは、発信しなければ伝わりません。

しかし、発信すれば大きなインパクトを与えることになります。

「どんな職場づくりを目指してほしいか」というメッセージとあわせて、ストレスチェックを受けなかった方へも、日々の業務へのねぎらいの言葉と、ぜひ次回は受けて欲しいというメッセージを示していただければと思います。

 

相談窓口の利用促進

例えば、2017年1月1日に改正された「育児・介護従業法」では、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とするハラスメント防止措置について、相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備が事業場に義務づけられました。

2015年にはパートタイム労働者からの相談対応窓口の設置が義務付けられ、その窓口を入社時に渡す労働条件通知書に明示するようになっていますし、事業場の中で、各種相談窓口を設置されていることと思います。

ストレスチェックを受検することは、自身の職場環境等を改めて見つめ直す機会にもなります。

ストレスチェックの実施時期はこれら相談窓口の再周知等を行う良いタイミングになるのではないでしょうか。

相談窓口に寄せられた問題に対し、内容によっては、対処のタイミングに悩む事業場もあります。

ストレスチェックと同時期に相談窓の再周知をし、その利用と職場分析のタイミングが合えば、調査や対策がスムーズに行えるケースもあるでしょう。

来期のストレスチェック実施時に活用していただきたい方法の一つです。

 

各種研修の実施

今回のストレスチェック制度の流れの中でもお声がけいただきましたが、特にセルフケアを促す研修を実施するタイミングとしては、ストレスチェックの結果通知の時期は最適です。

ストレスチェクの結果の見方や対策の考え方、医師との面接を受けることの勧め等、書面だけでは受け流されがちなことを伝える良い機会となりました。

あわせて、過剰なストレスを軽くするためのストレス対処法(ストレスコーピング)や、余計なストレスを溜めないような思考法など、自分のストレスとうまく付き合っていくためのセルフケア研修は、ストレスチェックの機会をとらえてぜひ実施していただいと思います。

次に、職場分析の結果が出る時期は、管理職研修の時期に適しています。

管理職による「ラインによるケア」は簡単ではありません。計画的かつ継続的な研修が望まれるため、この時期の管理職研修を「毎年恒例」とする事業場もあります。

特に、「回答率」が低い組織であれば、その対策は、まずは上司の意識改革からはじめる必要があります。

また、ハラスメントにお悩みの組織であれば、ハラスメントの防止や叱り方等のセミナーも必要です。

「集団分析の結果を受けて実施されたのか?」と管理職がビクッとすれば、問題意識も高まり、従業員としても「会社が自分たちのために動いてくれた」と好意的に認識されるかもしれません。

このように、ストレスチェックを研修にインパクトを持たせるためのツールとして活用することもできます。

 

部門の壁を越えたコミュニケーション

「〇〇部はいつも無理ばかり言ってくる。」

「〇〇はこっちの苦労を全く分かっていない。」

同じ会社の中で、あの部署は、この部署は、とお互いの利益を優先させたやり取りからの衝突が絶えない。そんな状況も珍しくありません。

会社としての目的や目指す方向は同じはずなのですが、部署が違えば雰囲気も仕事の仕方も異なります。

「異なる」組織同士が、自部門の利益を最優先に業務に取り組む中では、誤解が生じることも多く、互いの理解は欠かせません。

トヨタ式には「前工程は神様、後工程はお客様」という言葉があります。

業務をスムーズに遂行する上で、互いの業務の流れや苦労する点、要望等を話し合い、理解し合う場は有用です。業務の重複や、効率的でない作業が発見できれば、残業時間の削減にもつながります。

業務改善の為の会議をするよりも、先にお互いの仕事を知る交流の場を設けることが大切です。

グループワーク形式での研修が適していますが、1時間程度の小集団活動でも十分です。ファシリテーションの基本をおさえていただけば、社員の方が順にファシリテーターをなって場づくりをすることも可能です。

社内ファシリテーターの養成も行っておりますので、興味がおありの方はお気軽にお問い合わせいただければと思います。

 

まとめ

ストレスチェック制度は義務化されたから仕方なくやったけれど、集団分析は努力義務ならしなくてもいいか。

もし、そのようにお考えでしたら、とてももったいないことをされています。

外部機関に委託し、集団分析に別途費用が掛かるということであれば話は別ですが、厚労省版のプログラムをダウンロードしてお使いの事業場であれば、集団分析結果はすぐに出てきます。

ストレスチェック制度において、事業場から能動的にアプローチできるのは、この集団分析結果くらいしかありません。

是非、この機会を有用なものにしていただきたいと思います。