男女雇用機会均等法では、事業主は、職場におけるセクシャルハラスメントをなくすため、雇用管理上必要な措置を講じなければならないとしています(同法第11条1項)。
2017年1月の改正により、マタハラ・パタハラ等防止措置も義務付けされました。
企業によっては、2015年12月に50以上の規模の事業場に義務付けられたストレスチェック制度の結果のフィードバックとからめて、職場環境改善の礎としてハラスメント研修を導入され、相乗効果を生んでおられるところもあります。
ストレスチェック制度の受検対象者に派遣社員を含んでおられない派遣先事業場が多いように感じますが、労働者派遣の場合、先に書いたようなハラスメント防止措置義務を負う「事業主」は派遣元だけではありません。
あなたの会社では体制が整備されていますか?
今一度確認してみましょう。
目次
労働安全衛生法の適用に関する特例(労働者派遣法第45条)
安全衛生管理に関して、製造業については徹底されています。月に一度の安全衛生委員会が開催され、産業医の先生に出席いただいている事業場も少なくありません。
一方、サービス業をはじめとした他の業種は50人以上の規模の事業場に義務付けられた衛生委員会すらなく、会が開催されていない事業場多いのが現状です。
また、安全衛生委員会は開かれているもののの、ヒヤリハットほか安全に関する内容がメインで、衛生(健康)に関する内容の話し合いついては議題に上がっていない事業場も多いように思います。
2015年12月に50人以上の規模の事業場でストレスチェック制度導入が義務化されたことにより、今まで、義務である産業医の選任をしていなかった事業場も産業医を選任をし、安全衛生委員会の開催をするなどの流れにはなってきつつあります。
この安全衛生管理に関して、派遣元、派遣先のそろぞれの役割について具体的に定めているのが労働派遣法の第45条です。
雇い入れ時や作業内容変更時の安全衛生教育だけでなく、セクハラ、マタハラ、パタハラの防止措置についても、雇用主である派遣元事業場が責務を負うことはもちろん、派遣労働者は派遣先の指揮命令の下で働いていますので、派遣先においてもハラスメント防止措置を講じる必要があります。
派遣法では、労働者派遣の就業に関して、派遣先も事業主とみなし、均等法第11条1項を適用するという特例を設けています。
派遣先の事業場においては、義務があることをしっかりと理解して、セクハラ防止に向けて必要な対策をとる必要があります。
派遣労働者からの苦情の申出対応についても、派遣元事業主に知らせるとともに、派遣先と派遣元とが連携し、迅速な対応をすることが極めて重要です。
派遣社員に対してのセクハラ判例
大阪にある水族館でも、20代から30代の派遣社員2名に一年以上にわたって言葉のセクハラを行った男性社員に会社側が警告せず出勤停止とした懲戒処分が重すぎるかが争われた裁判がありました。
最高裁は、セクハラ行為での懲戒処分を妥当だとする初めての判決を言い渡しました。
会社はセクハラ禁止文章を周知したり、研修を行うなどの防止措置をとっていたため、使用者責任を問われることはありませんでした。
しかし、現在香川県下でハラスメントに関する教育研修を行っている事業場は多いとは言えません。
つまり、何か起こった時に使用者責任を問われかねないリスクを抱えている事業場は少なくないということです。
事業主へのハラスメント防止措置の義務化。
対応すべきハラスメントの内容が少しずつ増えている今、何もしないでいることは命綱なしでロープを渡るようなものでしょう。
何かことが起こってから対応を考える事業場はほとんどですが、その「何か」が可能な限り小さなうちに策を講じることが重要です。
新入社員の受け入れ準備の一つとして、来年度の準備項目の一つに入れておきたいものです。